残念ながら、蜻蛉の予感が半分的中してしまった。日本1−0イラクの後半27分、イラ
クの右サイドのFWがドリブルで中央のバイタルエリアに向かって切り込みながらエ
リアの外にいた味方に短いパス。パスを受けた選手がゴール正面に位置していたセン
ターバック(CB)昌子のスライディングタックルを交わしてボールはCB吉田の前
に、そのとき後にいたゴールキーパー(GK)川島が「クリアー!」と指示したそう
だが、吉田はその意に反して相手に背を向けて体でカバーしながら川島にボールを
キャッチさせようとした。しかし川島はそれに反応できずボールを前にこぼしてし
まった。左サイドバック長友も必死に戻ってクリアしようとしたが触れず、ボールの
前に飛び込んできた相手にシュートを許し、同点ゴールを決められてしまったのだ。
皮肉にも、私が一番心配していた(CB森重不在の)ディフェンダーの要であるGK
とCB絡みの連携ミスによる失点を予感していたからである。このプレーに関して選
手たちを責めることはできない。昌子の責任でもないし、それどころか彼は、日本が
W杯本大会に出場できれば、間違いなくレギュラーとして活躍できる可能性がある有
力な選手の一人である。
日本は、前半8分、右コーナーキック(キッカー本田)からトップのFW大迫がへ
ディングシュートを決め、幸先の良いスタートを切った。その後も(PKと思われる
プレーも2度あった)追加点のチャンスがあったが、主審(中国人)の判定は日本に
厳しく、イラクの選手の激しい反則プレーにも笛を鳴らさず、日本の選手がケガする
場面が度々あった。残りの2戦の審判の指名に関しても心配のひとつ。充分警戒すべ
き課題である。私は、南米にて、ペルー代表が、何度も審判の誤審に泣かされてきた
のを見てきたから言えること。
この試合の結果に関しては、ハリルホジッチ監督とスタッフの間違いによる責任は大
きいと断言できる。
先のシリア代表戦と今回のイラク戦を比較すると、システム:4−1−2−3
4−2−3−1、
選手のポジション:アンカーMF山口(井手口)右MF今野(本田)左MF香川
(倉田)右FW久保(浅野)
左FW原口(乾)CF大迫(岡崎)、ボランチMF遠藤、井手口、右FW本田、左
FW久保、トップ下原口(倉田)、トップFW大迫。
以上のシステムを変えたのはMF山口の負傷のためかもしれないが、選手の久保と本
田と原口のポジションを全て変えてしまったのには驚いた。特に原口を不慣れなトッ
プ下、本田はシリア戦でセンターポジションで良かったので、トップ下と思われたの
に右FWに戻してしまい。シリア戦で調子がでなかった久保を反対の左FWにしてし
まった(ケガしたのもそのせい)。このような即興的な配置換えでよい結果は期待で
きない。日本代表の監督が、選手をこのような使い方をすべきではない。選手たちは
各クラブに所属していて、一時的に借りているのだということ。代表だかからといっ
て、無責任な使い方はできないはずだ。
日本代表の悔やまれたプレーは、後半20分、日本1−0のとき、右サイドからDF酒
井宏樹が抜け出しゴールラインからゴール前にグラウンダーのクロスを入れた場面
(ビデオを見れれば気づくと思うが)ゴール前左サイドに大迫がフリーで詰めていた
のだ。酒井のクロスのタイミングが一瞬遅くボールは大迫に渡らなかった。そのプ
レーで、大迫は酒井に向かって「なぜもっと早く(完全にフリーで、しかも充分ス
ペースがあった)蹴らないんだ!」と言わんばかりに大声で怒鳴っていたのだ。その
7分後に同点になったのだから、チームにとって惜しまれるプレーであった。日本選
手のクロスの技術は蜻蛉の目からして上手いとは言えません。
この試合の結果、勝ち点1だけ日本代表は抜け出したといっても、現実はライバルの
オーストラリア戦(ホーム)とサウジアラビア戦(アウェー)の試合は、どちらかの
試合に勝たねばならない状況。これまで勝てないオーストラリアであっても、絶対に
勝たねば、W杯出場の扉を開くのは難しい。この試合のために日本のというか我々
「日本人一人一人のエネルギー」の総力を結集して勝たねばならないのです。これが
蜻蛉のつぶやきである。