日本代表にとって厳しい引き分け/W杯ロシア大会アジア最終予選B組 イラク代表戦 6月13日テヘラン

残念ながら、蜻蛉の予感が半分的中してしまった。日本1−0イラクの後半27分、イラ
クの右サイドのFWがドリブルで中央のバイタルエリアに向かって切り込みながらエ
リアの外にいた味方に短いパス。パスを受けた選手がゴール正面に位置していたセン
ターバック(CB)昌子のスライディングタックルを交わしてボールはCB吉田の前
に、そのとき後にいたゴールキーパー(GK)川島が「クリアー!」と指示したそう
だが、吉田はその意に反して相手に背を向けて体でカバーしながら川島にボールを
キャッチさせようとした。しかし川島はそれに反応できずボールを前にこぼしてし
まった。左サイドバック長友も必死に戻ってクリアしようとしたが触れず、ボールの
前に飛び込んできた相手にシュートを許し、同点ゴールを決められてしまったのだ。

皮肉にも、私が一番心配していた(CB森重不在の)ディフェンダーの要であるGK
とCB絡みの連携ミスによる失点を予感していたからである。このプレーに関して選
手たちを責めることはできない。昌子の責任でもないし、それどころか彼は、日本が
W杯本大会に出場できれば、間違いなくレギュラーとして活躍できる可能性がある有
力な選手の一人である。

日本は、前半8分、右コーナーキック(キッカー本田)からトップのFW大迫がへ
ディングシュートを決め、幸先の良いスタートを切った。その後も(PKと思われる
プレーも2度あった)追加点のチャンスがあったが、主審(中国人)の判定は日本に
厳しく、イラクの選手の激しい反則プレーにも笛を鳴らさず、日本の選手がケガする
場面が度々あった。残りの2戦の審判の指名に関しても心配のひとつ。充分警戒すべ
き課題である。私は、南米にて、ペルー代表が、何度も審判の誤審に泣かされてきた
のを見てきたから言えること。

この試合の結果に関しては、ハリルホジッチ監督とスタッフの間違いによる責任は大
きいと断言できる。

先のシリア代表戦と今回のイラク戦を比較すると、システム:4−1−2−3
 4−2−3−1、

選手のポジション:アンカーMF山口(井手口)右MF今野(本田)左MF香川
(倉田)右FW久保(浅野)

左FW原口(乾)CF大迫(岡崎)、ボランチMF遠藤、井手口、右FW本田、左
FW久保、トップ下原口(倉田)、トップFW大迫。

以上のシステムを変えたのはMF山口の負傷のためかもしれないが、選手の久保と本
田と原口のポジションを全て変えてしまったのには驚いた。特に原口を不慣れなトッ
プ下、本田はシリア戦でセンターポジションで良かったので、トップ下と思われたの
に右FWに戻してしまい。シリア戦で調子がでなかった久保を反対の左FWにしてし
まった(ケガしたのもそのせい)。このような即興的な配置換えでよい結果は期待で
きない。日本代表の監督が、選手をこのような使い方をすべきではない。選手たちは
各クラブに所属していて、一時的に借りているのだということ。代表だかからといっ
て、無責任な使い方はできないはずだ。

日本代表の悔やまれたプレーは、後半20分、日本1−0のとき、右サイドからDF酒
井宏樹が抜け出しゴールラインからゴール前にグラウンダーのクロスを入れた場面
(ビデオを見れれば気づくと思うが)ゴール前左サイドに大迫がフリーで詰めていた
のだ。酒井のクロスのタイミングが一瞬遅くボールは大迫に渡らなかった。そのプ
レーで、大迫は酒井に向かって「なぜもっと早く(完全にフリーで、しかも充分ス
ペースがあった)蹴らないんだ!」と言わんばかりに大声で怒鳴っていたのだ。その
7分後に同点になったのだから、チームにとって惜しまれるプレーであった。日本選
手のクロスの技術は蜻蛉の目からして上手いとは言えません。

この試合の結果、勝ち点1だけ日本代表は抜け出したといっても、現実はライバルの
オーストラリア戦(ホーム)とサウジアラビア戦(アウェー)の試合は、どちらかの
試合に勝たねばならない状況。これまで勝てないオーストラリアであっても、絶対に
勝たねば、W杯出場の扉を開くのは難しい。この試合のために日本のというか我々
「日本人一人一人のエネルギー」の総力を結集して勝たねばならないのです。これが
蜻蛉のつぶやきである。

By tombowchan

センターバック森重を招集しなかった重大なミス/W杯ロシア大会ア ジア最終予選イラク代表戦を前に

この蜻蛉ちゃんのサッカーは、昨年〈2016年〉の6月1日(リオ五輪アジア最終予選
U-23日本代表が韓国戦に勝利のコメント)以来ご無沙汰しておりました。本日から、
日本のサッカーに関して、蜻蛉の「つぶやき」を再開します。よろしく。

2018W杯ロシア大会のアジア最終予選B組の日本代表は、残り3試合、順位はトップ
でありながら、2位サウジアラビアと3位オーストラリアと勝ち点16で同率(得失点の
差)。日本は1試合多くても、明日(6月13日)は因縁のライバル、イラク代表と中東
のイランの首都テヘランでのアウェー戦。テヘランは標高1300メートルの高地で、気
温がC40度の猛暑、しかも湿度が10%という乾燥地帯という、日本の選手にとって厳
しい条件であり、しかもイラクの選手と比較して日本の選手は体格と体力にても劣勢
である。

日本代表にとってイラク戦は、このように厳しい条件であっても、絶対に負けられな
い重要な試合である。その理由は、最後の2試合にオーストラリア戦(ホーム)とサ
ウジアラビア戦(アウェー)という最大のライバルが控えているからである。

それだけ重要な試合なのに、6月7日のシリア代表とのキリン杯(結果は1−1の引き
分け)、と6月13日のイラク戦に招集した日本代表メンバー25人の名前を見て驚い
た。これまで常連だった、GK西川、DF森重、MF清武を呼ばずに、GK中村航輔
(柏)、DF宇賀神友弥(浦和)、DF三浦弦太(G大阪)、MF加藤恒平(PFC
ペロエ・スタラ・ザゴラーブルガリア)という意外な選手を呼んだからである。

特に、センターバック(CB)の要である吉田の相棒である森重を外したのには驚き
と同時に、この人事が日本代表の致命症になるのではないか、という予感がした。シ
リア戦での香川の負傷退場。同じ左サイドのDF長友とCB昌子源(鹿島)のライン
の位置が離れていたため、香川は自分のミスで相手にボールを奪われ、味方がカバー
してないため深追いして無理な体勢で相手ボールを奪おうとして肩を脱臼。MFアン
カーの山口も負傷、長友も負傷。また、GK川島のファインセーブで相手ゴールを救
われたのも、DF陣の連携ミスがあったからだ。昌子は鹿島で活躍していても代表で
の公式戦では未経験といってよい。DF陣を一人だけ代えるといっても、実際には周
りの味方の選手との擦り合わせが必要なのだ。森重のパフォーマンスが落ちているこ
とは確かであるが、だからといって、病気や怪我でなければ(FC東京でプレーして
いる)、新たなメンバーと比較すれば、経験値からいっても計算できる選手。もし吉
田が欠場したら誰がDFのリーダーになるのか?、おそらくそこまでは監督は考慮し
ていないであろう。とんでもない重大なエラーである、と私は思っている。日本サッ
カー協会の西野強化委員長自身は気づいておられないのだろうか?

招集された選手には申し訳ないが、世界的にも守備陣に関しては、特にGKとCBは
チームで最も重要なポジションであり建物でいえば土台である。安易に入れ替えたら
チーム体の崩壊になることは、世界のトップクラスの監督なら誰でもが知っているこ
と。なぜ、これほど大事な(日本代表がW杯の出場権を得るかどうかの瀬戸際の)時
期にて、明らかに戦力でない選手たちを招集し、戦力として計算できる西川、森重
(吉田は腰痛?)、清武(香川が負傷?)をなぜ呼ばなかったのはか? 不思議であ
る。

明日の試合に蜻蛉の予感がはずれ日本代表がイラクに勝利することを願い、つぶやき
を閉じることにします。

By tombowchan

サッカー五輪日本代表にオーバーエージ(OA)の選手がなぜ必要なのか?

U−23日本代表がアジア最終予選にてリオ五輪出場権を獲得した途端いきなり、話
題がOAの候補選手になり、メダルの獲得になってしまった。(セッカチな日本人の
性格が表れている) ロンドン五輪で4位になったチームの選手たちを「プラチナ世
代」。それに対して、今回の代表チームを「谷間の世代」と評して、あまり期待して
いなかったのだ。

期待していなかったチームが「なぜアジアの強豪を相手に、しかもコンディション調
整が難しい中東での大会にて全勝できたのか」をも深く考えることなく、OAやメダ
ルの心配をするのか。手倉森監督は、この予選の第一戦(北朝鮮戦)後に、「OA枠
を使わずに済ませる私案を持っている」と述べられている。ところが優勝後に「優勝
で浮ついたり、成長にもたつきが見られるようなら、OAの話題であおろうと思って
いる」と語っておられる。一方選手側の声(FW広島の浅野選手)は「OAはいらな
い」と述べている。 手倉森監督は、ガーナ戦後、そのことに対し「その割りに点を
取らなかった。それよりOAと競争してくれといいたい」と記者団に語っておられ
る。

手倉森監督に一言述べてみたい。浮ついているのは、「監督自身か協会の強化技術委
員会ではないか?」。選手たちの声を冗談のようにメディアに流したら、「貴方がこ
れまで得た信頼感はどうなるでしょう」。この世代の選手たちは、代表選手になるの
もいいが、それ以上に所属しているクラブでレギュラーポジション獲得のため真剣に
取り組んでいるはず。監督自身がこれまで構築してきたチームを五輪でメダルを取る
ために指導していないOAの選手を、わずかな期間で、どうやって融合させるのか、
選手たちの立場はもっと複雑なのだ。自動車の部品とは異なる生身の人間だからだ。

その現実はU−23代表候補の選手たちに負傷者が続出していることである。「なぜな
のか」考えたことはありますか? 負傷の原因のひとつは、この世代の選手は、J1
クラブだけでなくJ2の選手もいて、レギュラーポジションもとれず、五輪にも行き
たいという板ばさみの状態で、自分をアピールするために、球際のプレーで無理した
り、ケガをしていても言い出せず出場しているケースがほとんど。自己管理ができて
いないのだ。

五輪の登録選手は18人、OA枠は3人でフルに使えば、U−23の選手は15人、GK2
人を除けば13人だけ。

それに、OAの選手と同じポジションの選手は、さらに厳しくなる。OAの選手を補
強したらメダルを獲得できるほど世界のサッカーレベルはあまいのか? 「一貫性」
と指針に掲げながら、目先のメダルという餌に喰らいつく魚になりたいのか。日本
サッカー協会には、独自のポリシーはないのか? FIFAとIOCによる邪道な
「OA枠」を打破するためにも、日本はU−23のチームで貫いてもらいたい。という
のが蜻蛉のつぶやきである。

By tombowchan

大勝したものの試合内容には不満<W杯ロシア大会アジア2次予選最終 戦>

日本代表は、W杯ロシア大会アジア2次予選E組の残り2試合、アフガニスタン代表
戦(3/24)とシリア代表戦(3/29)、をホームの埼玉スタジアムにて行った。結
果は、両試合とも日本代表は5−0にて大勝してグループ1位で突破した。

この2戦の日本は、最終予選で最強韓国と同じ組になるのを回避するためにも、最終
戦のシリアに勝たねばならない立場に置かれていた。そのため、アフガニスタン戦で
は本田、香川といった主力を温存。前半は即席的なチームで、選手たちは存在をア
ピールするため、ハリルホジッチ監督の意図とする堅守速攻を忠実に実行していた。
しかし、圧倒的に攻めていながら、選手間の連携が不十分で、バックラインを下げた
相手の壁を破るには至らなかった。前半終了間際に、それまで直接ボールに触るプ
レーにあまり関わっていなかった、MF清武のスルーパスをFW岡崎の絶妙なフェイ
ントからのシュートにて先制点を決めた。後半のアフガニスタンは前半の失点で集中
力が緩んだのか、日本は幸運にも相手のミスもあって、4点を追加して、5−0で大
勝。

シリア代表戦の日本代表の先発は、アフガニスタン戦のメンバーを6人入れ替えた。
日本はキックオフから、ホームゲームらしく果敢に相手陣内に攻め込み、決定的な
チャンスがあったにもかかわらず「惜しい!」という溜息の連続。前半のCKを数え
てみたら10回。幸運にも、前半17分、左サイド宇佐美のショートコーナーから香川が
シュート気味のクロス。相手GKがゴール正面で弾いたボールが味方DFの顔面に直
撃してオーンゴール。圧倒的に攻めていた日本が、シリアのカウンター攻撃で危ない
場面もあったが、日本が1−0で折り返した。

後半開始早々の9分、ボランチの山口が空中での競り合いで相手の頭が鼻に直撃して
負傷退場というアクシデントがあった。意外にもボランチでない原口が交代して入っ
た。日本は追加点をと積極的に攻め、本田がフリーでヘディングシュートも左ポスト
に嫌われゴールならず。その後シリアのカウンターで相手のシュートが左ポストに直
撃(これが決まっていたら、その後の展開も変わっていたかもしれない)。21分、日
本は相手ゴール前で本田が浮いたボールを足で横にいた香川へパス、香川はそのパス
をゴールを背にして胸でトラップし、反転しながら左足でボレーシュート。素晴らし
いゴールを決めた。その後も、本田、香川、原口が得点を重ね、日本は5−0で大勝。

結果だけを見れば楽勝。だが試合内容を見れば、2試合の前半がそれぞれ1−0でし
かも、終了間際の1点と相手の自殺点。日本代表の最重要課題である、「決定力の不
足」と「守備力が不安定」。この2つが解消されていないのが目立った試合であっ
た。

最終予選の対戦相手国は、JリーグのチームがACLで苦戦しているように、ホーム
&アウェーで、しかも直接W杯出場権が懸かった試合になる。シリア戦で負傷した山
口と競り合った相手の選手のプレーこそ、決戦での激しく厳しいプレーなのだ。その
ためにも時間を無駄にせず、日本の課題を解消するだけでなく、海外でプレーする選
手たちの活躍とJリーグ、しいては日本サッカー界に携わる一人一人が自分のことと
して取り組んでもらいたい。これが蜻蛉のつぶやきである。

By tombowchan

ワールドカップとオリンピック出場は日本代表の責務<日本サッカーへの提 言>

ワールドカップ(W杯)やオリンピック(五輪)のような世界的な大会のアジア予選
を突破して、本大会出場をし続けることこそ、サッカー日本代表の場合、何よりも重
要。もちろん女子も、各年代層のW杯も同様だ。

なぜか?:日本は地理的に、欧州や南米のトップクラスの国々へ簡単に遠征できる環
境ではないことに問題があるからだ。W杯や五輪こそ、日本が世界のトップと真剣勝
負ができる唯一の機会であり、そこで試合することはもちろん、W杯に向けて、ある
いは五輪に向けて様々な準備をする過程で、日本はすべての面で得るものはとてつも
なく大きい。これらすべてのプロセスが日本サッカー界(各分野と個人も含めて)の
財産になっていくのだ。

このような大会で、数多くの場数と経験を積んでこそ、着々と「世界のトップとの差
を詰めているのだ」という実感がわいてくるのだ。逆に、もし出場できない場合、そ
れらすべてが空白になってしまうのだ。

ところが、日本の場合、本大会に出場しても、結果が出せないと落胆し、それまで積
み重ねてきたことまで否定してしまう。過去のW杯06年のドイツ大会(ジーコ監
督)、10年の南アフリカ大会(岡田監督)、14年ブラジル大会(ザッケローニ監督)
にしても、結果とか内容を気にして(責任回避的行動で)、本当の意味での反省がな
されていず、次期監督候補の話題で矛先を変えてしまっていたのだ。

協会と強化技術委員会のスタッフの交代や監督の交代の度に指針が変更されたりで、
系統的で継続性という一貫性がないのだ。過去の3大会の監督とその国籍を見ただけ
でも分かるはず。それだから、いつまでたっても日本のサッカーの本質は、同じとこ
ろを行ったり来たりで、変わっていず、その間、選手たちは、歴代の監督に振り回さ
れているだけなのだ。

下部組織のU−20、U−17、U−15にしても、アジア予選で勝てなくなっている。一
旦W杯の大会出場が途切れると、連鎖反応のように出場できなくなる。若いうちに国
際舞台で経験する機会を失い、再起するのに、今回のU−23のように苦難を強いられ
るのだ。それだからこそ、日本代表は世界的大会に出場のため、アジア予選を突破す
ることは不可欠。

世界トップとの距離を確認する意味でも、勝ち負けの結果だけでなく、すべての角度
から謙虚に評価して、長所と短所を抽出して、強化育成のための、ダイナミックな緻
密なプランを立て準備する必要がある。

そのためにも、日本代表Aが18年W杯ロシア大会出場がすべて。そうでないと、日本
のサッカーファンは少し少し興味が薄らいで離れていってしまうのだ。なでしこジャ
パンのリオ五輪予選も同様だ。もし出場できなかったら? そうなってからでは遅す
ぎる(ペルーのサッカーを私は、36年観てきているから心配なのだ)。これが蜻蛉の
つぶやきである。

By tombowchan

日本代表総評:マネージメントの勝利<U−23日本代表リオ五輪アジ ア最終予選(7)>

現代の情報社会はサッカー界にグローバル化をもたらした。そのため、サッカーの戦
術・技術・体力といったものには、それほど格差がなくなってきている。それに、今
回の五輪予選のようにU−23という同年代にてのレベルでは大きな違いはない。勝
負を分けるのは、ディーテール(細部事項)の面で、対戦相手を上回る必要がある。
特に今回のリオデジャネイロ五輪出場をかけたアジア最終予選は、猛暑の中東カター
ルでの集中開催、期間約1カ月、それに過密日程といった中で、チームをマネージメ
ントしなければならない。

そのような厳しい条件の中で、手倉森監督の率いる日本代表は、五輪出場権獲得とア
ジアU−23選手権優勝という、素晴らしい結果を出した。個々のレベルでは、対戦
した韓国、イラク、イラン、北朝鮮と比較して、正直なところ日本の選手は高いとは
言えなかった。グループ戦の北朝鮮との試合を観戦したときの印象は最悪であった。
しかし、1−0で勝った。この試合の内容と結果が、逆に、チーム内に、危機感と競
争心が芽生えたことが、その後の快進撃をもたらしたと言えよう。

このチームは「谷間の世代」と呼ばれていた。手倉森監督がこの世代を引き受けたU
−19時代は、先発と控え、関東と関西など派閥が乱立して、「ミスしろ、ケガし
ろ」と身内の自滅を願う選手がいたそうだ。そのため、監督は規律を正すために人間
教育から着手したそうだ。ペルーで、私もこのような規律のないチームを何度も引き
受けてきたので、監督の気持ちがよく理解できる。こういう選手たちだからこそ、一
旦同じベクトルを合わせだすと、競争意識をもちながらチームが勝つために仲間意識
が強くなる傾向がある。

こういう規律のないチームだからこそ、監督をはじめコーチングスタッフ、チームを
支えるスタッフ全員に、緻密な作業が求められる。このような大会では重圧で、敏感
になって、特にストレスが溜まりやすい。それに、連日の練習や試合で体力の回復と
いうか調整が難しい。そういう面は外部の我々には見えない部分。手倉森監督は、初
戦の北朝鮮との試合前日に行われた公式会見にて「日本の未来、この世代を鍛え上げ
る大会にしたい。集中開催、過密日程等、タフだからこそ高めてくれる」と語ってお
られた。

これまで取り上げてきたデイーテールの差は、どれだけ選手たちのストレス、メンタ
ル、フィジカルといったマネージメントが発揮できたかの差と幸運の差とも言える。
その差は、準々決勝から決勝まで、8得点中7得点が、他国の足が止まった、後半1
5分以降に生まれていたこと、交代選手が活躍して結果を出していたこと、ゴールを
決めた後、控えの選手たちと喜びを分かち合っていたこと等々。

優勝という結果を出したチームは、必ずといって、そこに辿り着くまでに、綿密なプ
ランとたゆまない努力をしている。この度のU−23の五輪出場権獲得とアジア選手
権優勝は、総力を結集できたマネージメントの

勝利と言えそうだ。これが蜻蛉のつぶやきである。

By tombowchan

U−23日本代表、韓国の幻想を突き破りアジアを制す<リオ五輪アジ ア最終予選観戦記(6)>

1月30日(土)ドーハ(カタール)。永遠のライバル日本代表対韓国代表の試合。両
国は、準決勝にて、既に五輪への切符を獲得しているので、最終予選ではなく、事実
上、U−23アジア選手権決勝であった。

試合前の予想では、韓国が絶対的に優勢と伝えられていた。というのは、この世代の
代表は親善試合以外に、日本は勝ったことがない。ロンドン五輪での3位決定戦とア
ジア大会でも完敗。しかも韓国は、このアジア最終予選で34戦無敗。それに、この試
合、韓国の監督も選手たちも「日本には負けない」と豪語するほど自信満々であっ
た。

韓国の試合を観ていないから私は、なんとも言えなかったけれど、試合が始まってみ
れば、下馬評どおり、韓国の、速いタッチのパスと動きの攻撃スピードに、日本の
ディフェンス(DF)陣はラインを下げて、クリアするのが精一杯という感じであっ
た。開始早々あっさりとゴールを決められたが、オフサイドの微妙な判定で救われ
た。その後、前半20分に左サイドからのクロスから先制点を韓国に許し、その後も、
ボールを支配され、日本の核となるべくボランチが機能せず、サイドも攻撃の組み立
てができず、一方的な試合だった。追加点されてもおかしくない展開であったが、韓
国はパス回しでシュートをせず、前半1−0で終了。

後半、日本はFWのオナイウに代えMF原川。FWは久保のワントップ。韓国は開始
早々の2分に右サイドからのクロスをゴール前でフリーのFWにこれもあっさりゴー
ルを決められ0−2。この時点では、大敗ムードであった。14分日本はMF大島に代
えFW浅野を入れ、ツートップに戻した。この交代が、両チームの形勢を逆転。22
分、MF矢島の縦パスに反応した浅野が右斜めに快速で走り、相手GKの出ばなに右
足でシュート。ボールはゴールへ吸い込まれ1−2。このゴールで、韓国の選手は動
揺し、同時に疲れが出だしたのか、その後1分もたたず、左サイドからDF山中が
ゴール前にクロス、矢島がヘディングできれいに決め同点。このクロスもGKが前に
出てパンチでクリアできたのだが、その前のゴールで集中力がきれていたのだろうと
思う。

35分、中島の浮き球のパスを、ゴール正面で、浅野が相手DFに体を当て、空かさず
ボールを受けて抜け出し、GKと1対1で向き合い、冷静に左足でゴール右隅に流し込
み、ついに逆転に成功。その後、矢島に代えMFの豊川を入れ、タッチラインを利用
して時間稼ぎ。タイムアップの笛がなり、日本代表の若者たちは、準決勝のイラク代
表との因縁、そしてこの決勝戦で韓国の連勝記録更新の野望と自信満々の幻想を突き
破り、アジアの頂点に立った。

「おめでとう!そして、ありがとう!」これが蜻蛉のつぶやきである。

追記:前回、植田選手(正)の名前を、上田選手(誤)と誤って記載してしまいまし
た。ここにて訂正させていただきます。

By tombowchan

日本代表執念と団結力で五輪出場を決めた<リオ五輪アジア最終予選観戦記 (5)>

1月26日(火)ドーハ(カタール)での五輪アジア最終予選準決勝にて、日本代表は
イラク代表に2−1で勝利。リオ五輪の出場権を獲得した。

イラク代表は、日本サッカー界というか日本人にとって忘れることのできない「ドー
ハの悲劇」の対戦相手。

日本がJリーグ開幕した1993年、勝てば、日本サッカー史上初めてのワールドカップ
(94年米国開催)出場が決定するところだった。日本が2−1で勝っていて、タイム
アップ寸前のアディショナルタイム、そのまま逃げ切れば、と思われたとき意外なこ
とが起きた。イラクのコーナーキック(CK)は、ショートコーナーから日本ゴール
前にクロスしたボールをヘディングで決められ(2−2の同点)万事休す。出場権を
逸した因縁の対戦相手である。

この試合も偶然か、舞台は同じドーハ、対戦相手も同じイラク代表。日本代表のU−
23は、ユース時代でもイラクに1度も勝ったことがなく、世界大会にも出場したこ
とがない。今回のイラク代表は大会参加国随一の実力あるチームという前評判であっ
た。それに加え、リオ五輪への出場権をかけた因縁深い試合でもあった。

この日本代表の世代は、この最終予選前、それほど期待されていなかった。それに、
グループ戦の第1戦での北朝鮮代表との試合で、勝ったものの試合内容は最悪だっ
た。けれども、勝ったことと、その後の試合に選手を入れ替え、22選手が出場したこ
と、それに、全試合勝利という結果を出せたことが、チーム内に信頼と「団結力」が
生まれ活気をていした。その力が「絶対勝ってみせるぞ!」という執念に置き換わっ
て、「ドーハの悲劇」を裏返すような、1−1の同点で迎えた、タイムアップ寸前の
アディショナルタイムの3分間に、FW久保に代わって入ったFW浅野が右サイドの
コーナー付近に出たボールを、中央から猛然とダッシュしてボールを奪い、直ぐ近く
にいたMF南野へパス、間髪入れずゴール前へクロス、相手GKがパンチで正面へク
リア。Dマーク(バイタルエリア内)に詰めていたMFボランチの原川が右足でト
ラップし左足で強烈なシュートでゴール右隅に決めた。これこそ、「ドーハの悲劇」
とイラク戦未勝利という因縁の壁を、チーム全員の団結力に、大和魂と執念を込めた
シュートで突き破って、「ドーハの喜劇」に塗り替えたのだ。

日本代表は、イラク代表のDFラインの裏へのロビングとドリブルやショートパスで
揺さぶられていたけれども、この試合も先制点を決めたことが、その後の展開に落ち
着きを取り戻すことができた。この先取点は前半26分トップのFW鈴木と久保の連携
プレーで生まれたもの。中盤左サイドでボールを奪い抜け出した鈴木はドリブルでス
ピードを落とさず、ゴール前へ強いアーリークロス。そこに相手と競り合いながら抜
け出した久保がジャストミートでプッシュして決めた素晴らしいゴールであった。

前半終了間際の43分、イラクにCKからヘディングで同点ゴールを決められたが、そ
の後の日本はGK櫛引、センターバックの上田、ボランチの主将遠藤が中心になり、
押されながらも組織的に強力なイラクの攻撃を未然に防ぎ得点を許さなかった。

手倉森監督はこの試合も4人先発を入れ替えた。「誰が出ても、誰と組んでもやれ
る」「どんな相手でも負けない」という選手たちの気持ちが団結力となり、「勝つ
ぞ!」という執念となって、五輪出場を決めたのだ。というのが蜻蛉のつぶやきであ
る。

By tombowchan

日本代表忍耐力で延長戦の末難敵イラン代表を破る<リオ五輪アジア最終予 選観戦記>

1月22日(金)ドーハ(カタール)。リオ五輪アジア最終予選準々決勝にて、日本代
表は難敵イラン代表に(0−0の後)延長戦の末3−0で勝利。五輪出場権獲得にあ
と一歩と迫った。

この勝利は、日本代表の手倉森監督と選手たちの「忍耐力」が、イラン代表を上回っ
た試合であった。選手個々はA代表のようなイラン選手に、試合開始早々、日本はD
F陣のミスもあり、FWモタハリが独走してGKと1対1。GK櫛引が体を張って防
ぎ失点の危機を救った場面もあった。しかしその後の日本は、冷静さを取り戻し、相
手のズルイ汚い挑発的なプレーにも怯むことなく、堂々と忍耐強く立ち向かってい
た。

この試合私がもっとも心配していたのは、日本の選手のペナルティエリア前後の反則
プレーでPKやフリーキック(FK)を安易に与えてしまうことであった。しかし心
配をよそに選手たちはミスをおかさなかった。両者の均衡状態を見ていて、おそらく
90分で決着をつけるのは難しいと私は思っていた。もし勝負を賭けるのであれば選手
交代があるはず。だが、手倉森監督はピッチにいる選手を信頼して動かなかった。

後半終了間際の38分FW久保に代え浅野、43分に右MF矢島に代え豊川を投入した。
この時の監督の思惑を考えると、両チームのグループ戦での状況を比較して、日本は
全選手が出場し休みも入れ、体力的なコンディションでイランに対し有利であると分
析。「延長戦にて勝負を賭ける」と決断し、終了間際になって交代させたのは、延長
戦へのウオーミングアップだったのだろう、と私は推察した。

手倉森監督の采配は的中した。延長戦前半6分、右サイドにて、DF室屋がパスを受
け、相手DFを切り返しで揺さぶり、左足でゴール前にクロス。交代したばかりの豊
川が相手DF2人の間隙を突いてヘディングシュートでネットを揺さぶり、均衡を破
る貴重なゴールを決めた。この豊川選手のプレーは素晴らしかった。

シュートレンジでのフィニッシュで必要な資質は、「即興的な意外性のある、相手に
とって意表を突くプレー」である。豊川は右サイドのMF矢島に代わって、右サイド
バックの室屋と同じ側のポジションのはず。しかし、意外なことに、豊川はセンター
に移動していた。それに相手のDF陣は、入ったばかりの選手を全然警戒していな
かったのも幸いし、意表を突かれた格好であった。(このようなプレーが日本のA代
表に足りないのだ)

延長戦後半のMF中島選手のクリーンシュートによる2得点も素晴らしかった。延長
戦前の中島は得意のドリブルを駆使して動きまくっていたが、逆に、汚い反則もまじ
えイランの選手に徹底的にマークされ、決定機をつくれなかった。しかし、快速ドリ
ブラー浅野が同じサイドでプレーしてから、相手のマークが緩んだことで、プレー空
間が広がったことが幸いし、左サイドからのミドルシュートと左サイドからドリブル
で中央に持ち込みきれいに決め、駄目押しの2得点を決め、鬼門の準々決勝突破。五
輪出場権に王手をかけた。

この試合の日本代表は、イラン代表のパワーとスピードで危険な場面があった。けれ
ども、全選手が見えないところで忍耐強く集中力を発揮していたこと、私がクラブW
杯で述べていた「交代選手が活躍できるチームは強い」ということを実現してくれた
ことが勝因。日本代表が一体になり総力を結集した見事な試合だった。

これが蜻蛉のつぶやきである。

By tombowchan

日本代表総力結集にてグループ戦全勝で突破<リオ五輪アジア最終予選観戦 記(3)>

1月19日(火)ドーハ(カタール)にて、日本代表U−23は、B組最終戦(第3戦)
のサウジアラビア代表に2−1で勝利。3戦全勝。勝ち点9でグループ1位(2位北朝
鮮)。22日、決勝トーナメントの準々決勝にて、A組2位のイラン代表と対戦するこ
とが決まった。

手倉森監督は、この試合も前回のタイ戦同様、先発の選手をDFの奈良以外10人を入
れ替えていた。勝っても負けてもB組1位で決勝トーナメント進出が決定しており、
事実上の消化試合であった。そのこともあって、これまで出場の機会に恵まれていな
かった選手にもチャンスを与えることができた。結果的には、3試合で総勢22人(G
K1人を除く)が出場できたわけであった。

サウジアラビアは勝てば準々決勝に進出できる立場にあったことで、日本が容易に勝
てる相手ではなかった。けれども、前半31分、第1戦で不調であったMF大島選手
(主将)が約30メートルの距離から右足で強烈なミドルシュートをゴール左隅に決
め、日本が先制。後半に入っても日本の勢いは衰えず、これまで不調だった右MFの
南野が右サイドでドリブルで相手DFを霍乱して、ゴール前に絶妙なクロスによるパ
ス。そこに飛び込んできたMFの井手口が右足でゴール右隅にきれいなシュート決
め、2−0と相手を突き放した。

その後の12分、DF植田がPKを与える反則を犯し1点を相手に献上(このPKは疑
わしかった)。その後にも得点チャンスがあったが、両チーム得点なしで、日本が2
−1で勝った。

このグループ戦を通して、日本代表は、第1戦の北朝鮮との試合、低空飛行で苦戦を
強いられたけれども。結果は1−0で勝利。手倉森監督が「「勝ったことがすべて」と
いう表現こそ、その後のチーム内に競争意識をたきつけ、全選手(GK1人を除く)
が出場して結果も出したことが、「幸運をもたらした」とも言える。

準々決勝のイランは、日本にとって一番難しいアジア最強のチーム。グループ戦とは
異なりノックアウト方式、しかも双方にとって、五輪への出場権をかけた、一歩も引
けない大事な試合。 そのためにも、

グループ戦で示した個々の選手の才能を結集させ、チーム全体の力となるよう
発揮して欲しい。

グループ戦は失点1であったが、PK2,バイタルエリア付近での反則でのF
Kもあり、CKも多かった。「セットプレーは約40パーセントの確立で」得点に結び
つく危険があり、日本は守備に問題を残した。

監督自身が責任をもつためにも、しっかり選手たちと話し合い、自分の考えを
完璧に選手たちに伝え、目指すサッカーをすることに、全神経を集中させる必要があ
る。

特に心配なのは、で示した日本選手の反則プレーである。なぜか?審判の判定に疑
問を感じているからである。どちらにせよ、日本代表は「総力を結集」して、鬼門の
準々決勝を突破してほしい。これが蜻蛉のつぶやきである。

By tombowchan